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古い資料からみる、以前のインキ止式万年筆

 今ではおよそ考えられないことですが、以前の万年筆は、

・インキ止式
・テコ式

この二種が主流でした。
 「インキ止式」は軸の中にインキをスポイトで入れて、後ろを閉めるとインキが出ないようにロックできる方式を言います。海外では「アイドロッパー」方式と言うことがありますが、日本では、内部にインキを止める弁が無い方式を単に「アイドロッパー」と言い、内部にインキを止める弁がある「インキ止式」と言って言い分けています。
 すなわち、(広義の)アイドロッパーに、(狭義の)アイドロッパーとインキ止式があるわけです。
 私が海外メーカーの方とお話ししたりした経験では、海外では使い分けていないようなので、注意が必要です。もっとも、海外では、インキ止式はほとんど流通していない点は注意が必要です。もっとも、日本でも全くと言っていいほど流通していませんし(標準品として製造しているメーカーは当社位のものですし…)、狭義のアイドロッパー自体も流通していないですけれども…。
 狭義のアイドロッパーは、たとえば、カートリッジ式の軸自体にインキを入れて使うようなものだと思っていただければ結構です。カートリッジ式のカートリッジが軸全体になったようなものです。その方式に中芯が入ってインキを止めることが出来れば、インキ止式と言います。また、インキ止式でありながら、スポイトでインキを入れずに直に吸入することが出来るもので有名なものに、オノト万年筆があります。

 テコ式は、レバーで軸筒内のゴムをつぶして、そのゴムの復元力でインキを吸う方式です。
P101005g7.jpg


 上記を前提に、以下の資料を読んでみてください。
 戦前のある万年筆店の資料です。

siryo.jpg


 戦前は、日本では、使わないときにインキの流れを軸から完全に遮断することが出来る軸であるインキ止式の方が人気があり、インキの流れには問題は無いが、上記文章中にあるような欠点があるテコ式はあまり人気がなかったことがよくわかります。
 一方で、海外では、インキ止式は何よりインキの流れに難があることから、人気が無く、テコ式の方が人気があったわけです。たとえば、蒔絵万年筆を考えたとき、蒔絵図柄を考えれば軸にレバーなどない方が良いわけですが、海外ではテコ式の方が万年筆実用を考えると人気があったので、テコ式で蒔絵という商品が少なからず存在しました。

すでにご紹介したテコ式に蒔絵が施された一例
P9240013.jpg

P9240003.jpg


 上記文章は、インキ止式でインキの流れに難がない万年筆を考案した、というように続きます。
 メカニズムとしては、軸の一番後ろに押しボタンを設け、それを押すことによりインキが少しずつ出るという仕組みになっています。この種の考案は有名な(上記文章とは関係ない他社の)振らなくても良い万年筆をはじめ、他社の製品でもあり、何例も見たことがあります。 

 当時は、一部大手メーカーのものを除いて、当時のインキ止式軸のほとんどが共通してインキの流れに難があったのです。
 中古でインキ止式軸をお求めになるときは、この点はご納得の上でお求めになる必要があります。私が自社製品ではこのインキの流れをものすごく重視してペン芯や首などを設計製作しております。本来はインキ止式軸といえども、後ろさえあければ間断なくインキがでなければなりませんし、そうであって当然です。後ろを開けて使うような万年筆は万年筆ではないということをおっしゃる方もいらっしゃいますが、きちんと作られたものならば、後ろさえ開ければ間断なく流れる(品物を私は製造している)と言う点はハッキリと申し上げておきたいと思います。インキ止式には、インキの流れに難があるというように一般には認識されており、実際そういうものが多かったのも事実ですので、私はインキ止式という名称は、自社製品では、変更した方が良いかとも思っています。
 ちなみに、以前のインキ止式万年筆がなぜインキの流れが悪かったか、それは、ひとえにペン芯に問題があったのです。ペン芯と軸が協働していれば、問題なくインキは出ます。
 テコ式でインキが出過ぎるのも、ペン芯が原因です。
 ペン芯が如何に重要な部品であるか、です。
 
 もっとも、インキ止式は、内部に弁があるからと言って、一部で言われているように、後ろの開け加減(弁の開け加減)で出をコントロールできるようなものではありません。デジタルの1と0のように、出るか出ないか、それだけを制御し、インキの出具合の調整方法は、他方式の万年筆と同じです(インキ出具合は、お納めするときにあらかじめ調整するものであり、ユーザー様のもとで筆記時に自在に加減できません)。
 
 インキ止式は、万年筆の方式としては、製作がもっとも難しい部類に入る方式です。
 現代においてインキ止式を作るならば、上記文章のような欠点が無いような万年筆を作らなくてはなりません。振らなくてはインキが出ない、とか、押しボタンをその都度押さなくてはならないなどと言った万年筆では駄目なのです。一端後ろをゆるめればあとは間断なくインキが流れる方式、それがインキ止式のあるべき姿であり、それを目指してペン芯を開発して参りました。

 ところで、現代の万年筆なら、インキの流れはどこも問題が無いと考えたいところです。しかし、修理でお預かりする品物を拝見する限り、海外製品などに、インキの流れに難があるものが少なからずあるのは、どうしたことでしょうか。私のところのペン芯製造設備で、ほんのわずか(ユーザー様が見ても判らない位のレベルで)追加工すればインキの流れは良くなります(目で見て判るくらいカミソリで突っついたような痕があるようでは駄目ですし、そんなことでインキの流れは良くなりません)。
 インキの流れは、何より重要であり、インキの流れが滞るような万年筆は使う気になりません。
 何より重視すべきなのは、実はペン芯の性能なのです。

 上記文章は、かつて、ペン芯が未熟であったことをストレートに告白していると、読み取ることが出来ます。

 エボナイト製で、現在のプラスチック製ペン芯と同様の性能の高いペン芯がベストであり、私もそのようなペン芯で行なわせていただいております。ただし、そのようなペン芯は、コストが掛かってしまうのが難点ではあります。

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 masahiro万年筆製作所  代表者 内野成広

Author: masahiro万年筆製作所  代表者 内野成広
総エボナイト製手作り万年筆を製造しております
一切の妥協を許さない完全な商品を目指し、生涯唯一の職業として励んでおります
ペン芯までエボナイトで製造している数少ない万年筆メーカーです。

また、株式会社パイロットコーポレーション 正規販売店として、パイロット商品の販売をいたしております。

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