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多条ねじ 四条ねじについて

 キャップのクリップと、軸に入れた名入れや軸に張ったシールが、一端位置をあわせても、ねじをはめ直すと、ある一定角度でずれるものがあります。これはどういうことなのでしょうか。

 私の万年筆の軸とキャップとの間には、4条ねじというものが切られています。
 これは特殊なねじですが、いったいどのようなねじなのでしょうか。

  ねじの山と山の間の距離のことを、「ピッチ」と呼びます。
20061103023223.jpg

 また、ねじが一回転すると進む距離のことを「リード」と呼びます。
20061103023508.jpg

 ねじは、棒に糸を巻いたようなものなので、イメージとしては、以下の画像のようになります。
20061103023612.jpg

 図Cの場合、ねじが一回転すると*から*までねじが進みます。
 すなわち、ピッチ=リードです。
 一般のねじのほとんどは図Cのようなねじで、1条ねじと呼びますが、いちいち一条ねじなどと呼ばれることの方が少ないです。

 では、以下の画像のようなねじはどうでしょうか。
20061103023902.jpg

 図Cと全く同じ間隔(ピッチ)ですが、一本糸が増えています。
 図Dの場合、一回転するとねじが*から*まで進み、図Cの二倍の距離進みます。
 独立したねじ山が二つあるねじ、これが二条ねじで、二つ切り込ませてあるので、一回転でねじの間隔(ピッチ)の二倍進みます。従ってピッチの2倍がリードということになります。リード=ピッチ×2

 以下の画像では3本切り込ませてあるので、3条ねじ、リード=ピッチ×3です。
20061103024303.jpg

 この切り込ませる本数が増えればそれだけ一回転に進む距離であるリードが大きくなります。
 二条ねじ以上のねじのことを多条ねじと呼びます。切り込まれるねじ(上記画像で言うと糸)の数を「条数」と呼びます。
 身の回りの瓶の蓋などにも、多条ねじは多用されております。

 私の製品のキャップと胴のねじには、切込みが4本ある4条ねじが使われています。
 
 下記の私の製品のキャップと螺合する胴のオスねじ画像をご覧いただくと、山の数が4と少しほどあることがわかると思います。
kiriage.jpg

 しかし、4本の切込みがある4条ねじなので、ねじ回転数は一回転なのです。

※キャップ内部に切られた4条ねじの内の二つの切り始め部分が透けて見えます
kiriwakesuke.jpg
 
 なぜこのようなねじを切るかと言うと、筆記時にキャップが適度な(多くの場合少ない)回転であき、なおかつねじが適切な山数でかみ合うようにするためです。
 仮に一回転のキャップで良いからと言って一条のねじで一回転のキャップを作ったら、ねじのかみ合いが一山しかなくて、いくらかみ合いの深いねじを切っても、強くキャップを閉めればねじがはじいたりねじ山を損傷したりしてしまいます。
 
 市販の万年筆のキャップの多くも多条ねじが切られていますが、条数は各メーカーによってまちまちです。

例:パイロットカスタム74は二条ねじ
  シェーファーはなぜか3条ねじの部品が多い

 今回の内容は、図DやEをご覧いただけば後の説明は不要と言っても過言ではないです。

 おさらいとして、最初に書いた、キャップのクリップと、軸に入れた名入れや軸に張ったシールが、一端位置をあわせても、ねじをはめ直すと、ある一定角度でずれるものがあるのはなぜか、考えてみて下さい。
 解説しますと、仮にその品物のキャップと軸とが二条ねじだった場合、上記D図のように、軸とキャップそれぞれに白と黒の二つの独立したねじが切ってあります。以下、便宜上、図Dのように、ねじ白とねじ黒と表します。ねじの組み合わせとしては、以下の二種類が考えられます。
① キャップのねじ白と軸のねじ白 キャップのねじ黒と軸のねじ黒が入る組み合わせ
② キャップのねじ白と軸のねじ黒 キャップのねじ黒と軸のねじ白が入る組み合わせ
 つまり、ねじの入る位置が、正反対になるのです。二条ねじですから、ねじの入る位置は、円周360度÷2で、180度になります。ねじを締め終わった位置も、上記の組み合わせ①と②で180度でずれるわけです。
 このように、二条ねじの場合、二通りのねじが入る組み合わせが考えられるので、軸の、クリップの真下に張ったシールも、クリップの真後ろに回ってしまうねじの組み合わせがあるのです。
 これが、3条ねじなら3通り、4条ねじなら4通りで、それぞれ、360度÷3の120度、360度÷4の90度ずつずれる組みあわせがあるのです。
 4条ねじなら4つの入る組み合わせがあるので、そのすべての組み合わせで理想的なねじ勘合にしなければならないので、1条ねじの4倍(実際には単純に4倍ではなくもっと難しい)難しい作業になるのです。

 なお、ねじの締結力(締まったネジのゆるみにくさ)は、厳密に言えばピッチやリードによって若干変化します。しかし、実際のところは、ねじのゆるみにくさは、閉まり終えたときの一瞬の締め付け力だけで決まります。手で開閉する万年筆部品の場合、ピッチやリード、そして、キャップの回転数やかみ合うねじの長さによって大きく変動するものではありません。キャップのねじの回転数が一回転より二回転ある方がキャップのねじがゆるみにくいといった表現は、間違いです。ゆるみにくさは、ねじだけではない、軸やキャップの総合的な設計や製作精度によって左右されるものです。締め付けている勘合が一端ゆるめば、そこからキャップが外れるまでの回転数が二回転も一回転も、ゆるんでいることには変わりないので、何回転だろうが無意味なのです。

 以前こちらの過去記事で、

オノトは、実は、後期になると設計が簡素化されてしまいます。初期のオノトは、軸が非常に凝った設計になっているのです。

と記させていただきました。具体的に申し上げると、後部つまみが二条ねじになっている点がその一例です。
 ちなみに、私のインキ止式万年筆の後部つまみも二条ねじです。ただし、オノトのものとピッチは異なります。

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