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お納めした万年筆が書き味悪くなった場合

 お納めした万年筆が、最初は書き味よかったのに、急に書き味が悪くなった場合、原因は何か。結論としてはペン先先端の位置関係が変化(食い違い、などと言います)して書き味が悪くなったためですが、以下の2つの要因が考えられます。
 以下の原因で書き味が悪くなった事例について、当方でお納めした商品の書き味が悪いというご相談が数例ございましたので、ご使用上ご注意頂きたい事項でもあるので、まとめて、ご説明させていただきます。

●ペン先が変形してしまった
 書いていて、ペン先にペン先本体が耐えられる以上の筆圧が掛かり、ペン先が変形してしまった場合、先端の位置関係が変化してしまうため、書き味は悪くなります。この場合、仮にご自身でお使いになってこのようになっても、これは、過去記事にも書きましたが、書いてなじんだということではないので、絶対的に再調整が必要です。
 また、過度な筆圧等により、変形したりした場合、場合によっては再度変形することがないように、正しい保持方法や、適度な筆圧掛け方のアドバイスも必要なことがあります。

●ペン先が横方向にずれてしまった
 ペン先が横方向にずれて、ペン先とペン芯の位置関係が、お納めした状態の正規の位置とは異なった位置に来てしまっている場合、先端の位置関係が変化してしまうため、書き味は悪くなります。ペン先はペン芯に単に重なっているわけではなく、後ろから押されているような感じのため※、ペン先とペン芯がずれると、先端の位置関係は異常を来してしまうのです。この場合は、前項とは違い、ペン先本体は変形していないため、イメージとしては、ずれている位置を戻せば良いです(実際はペン先自体の再調整も必要)。また、場合によって、ズレが起きやすくなっている場合は再度ずれたりしないように処置が必要です。また、ご使用方法が不適切なことによりズレが起きたときは、正しいご使用方法のアドバイスが必要です。

※このように押されているため、実はペン芯の形状や個性を把握してのペン先調整やその点を視野に入れたペン芯製作が必要ですし、それができていれば、調整した後ペン先セッティングが変化する(調整した後に戻る、などという表現がされているようですが)こともないのです。
 ペン先とペン芯は一組として考えて調整すべきなのです。たとえば、ペン芯やペン先のどちらか一方ものみを交換した場合は、装着したあと、新たな組み合わせとしての再調整が必要なのです。

 さらに説明すると、以下のようになります。
 まず、万年筆ペン先は、どんなものでも、装着された状態で、横方向の力には弱いです。以前の商品は、ペン芯や首がエボナイトで出来ていたので、かなりの力でペン先ペン芯を入れることが出来ました(実は軸やキャップをエボナイトで作ること以上に、こういう首やペン芯をエボナイトで作り、強固に入れることが可能なところにエボナイトを使う最大のメリットがあるのです)。しかし、現在の商品は市販のほとんどすべての商品は、ペン芯や首の両方もしくは片方がプラスチックなので、エボナイトほどは硬く入れられません。エボナイトと比べると、どうしても、筆記に必要な許容量以上の力が加わると横にずれます(エボナイトの場合はその許容量が大きくとれますが、エボナイト同士でも適切に設計・製造されていないと、許容量は少なくなります。エボナイト同士ならば良いというわけでもありません)。もっとも、通常の筆記力でずれることはありませんし、もしずれたら、必要以上の力が加わった、不適切な使い方がされた、ということになります。私のところでは、通常必要なレベルのズレ耐性があるかのチェックと通常の筆記力で左右にずれることが無いかテストしており、販売品も修理品も問題のあるものはお出ししていません(修理品で特別に問題があり、修正できないレベルのものは、その旨ご案内しております)。

なお、ここに掲載した画像のような、とても古い両ベロ製品は勘合方式が特殊なため、エボナイト同士でも、やや別次元の話になります。



 ちなみに、私の商品では、入り固さは、ペン芯・首内部ともエボナイトのため、素材クラックが起きる心配がないことから、非常に硬く入っています。また、硬く入ってはいますが、必要なとき、特殊工具を使用すれば、全く傷めることなく、ペン先の入り固さもゆるくなることなく、取り外すことが出来るようになっています。

 このように、販売品・修理品は、お納めするとき、ズレが無いか、適切な位置にペン先ペン芯がセットされているか、何度も確認してお納めし、必要な場合は完全に修正しておりますので、こちらからお納めしたものに、ずれているものはありません。お納めした直後のペン先の裏のペン芯の位置を良く見ておいて、常にその状態になっているか、たまにご確認頂くのが良いです。
 なお、必ずしもペン先の中心にペン芯が来ている状態がベストの位置とは限りません。あくまでも、ペン先ペン芯が落ち着く一番良い位置にあれば良いのです。

 勘合力や取り付け方法に商品ごとに差があるのも事実です。通常の使用では問題ありませんが、過酷な状況下では、より構造上ずれにくい商品をご選択頂くのが良いです。
 過酷な状況下でお使いになる方は、詳細はお問い合わせ下さい。アドバイスさせていただきます。
 その点では、すでに生産を終了した、在庫限り限定品のM90は、ペン先とペン芯がずれるということがおよそあり得ない、酷使に向く、その意味ではスゴイ商品です。
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 また、ご自身や、店頭などで、ペン先ペン芯を外して洗浄するケースがありますが、それを行うと、配慮せずに再取り付けすると、ペン先ペン芯をベストな位置で装着出来ず、これまた先端の位置関係がおかしくなることがあります。再装着は実は非常に難しく、一度でも取り外した場合は、再装着時の入り固さをも再度念入りに確認し、そこも調整する必要がある場合は調整が必要なのです。また、入り固さが適切な固さで再装着できても、前述のようにペン先ペン芯は微妙な組み合わせの関係になっているので、装着しただけでは、もとの適切な形状にセッティングされないことも多く、微調整は実は非常に難しいのです。洗うならば、ペン先ペン芯は外さずに洗うのが何よりベストです。ズレが起きやすくなっている場合は、このように、ペン先ペン芯を外してしまったことによる場合がほとんどです。当方では、新品販売の際にペン先ペン芯を外すことは、必要が無い場合は行っておりませんし、入りセッティングの確認は、すべての商品にて行っております。
 実は入りが緩くなってずれやすくなったというご相談の背景には、ペン先ペン芯を外してしまわれた影響が多いのです。ペン先ペン芯をむやみに外すことがなければ、入り固さはじゅうぶん持続しますし、ご心配要りません。抜き差しを繰り返し、その点の確認処置をしないままに、入りが緩くなったと商品を低く評価する方がいらっしゃいますが、それは大変に酷なことです。ペン先ペン芯は、取り外さないことですし、少なくとも、当方の販売品や修理品は、ご自身で取り外すことが無ければ、入り固さは問題ないような形でお納めしております。

 筆圧を掛ける場合、前後方向ならばやや強く掛けて頂いても、特に問題はありません。通常の筆記では前後方向しか力は掛かりませんが、特にひねって書いた場合や、意図せずに異様な状態で筆記してしまった場合は、横方向に異常な力が掛かる場合がございますので、ご注意下さい。

 また、落としてしまわれた場合も、横方向のズレや、変形は起きます。

 ペン先の変形か、ペン先が横方法にずれてしまったか、などは拝見すればわかります。もしそのようになった場合でも、作業料は無料で修正できることがほとんどです。

 この変形や横方向にずれてしまったことによる先端の位置関係変化に伴う書き味の変化は、当方の作り出した最初の書き味とは無関係のことになります。残念ながら位置関係が変化してしまうと、最初の書き味からは悪くなってしまいます。
 商品が到着したら、書き味と、ペン先ペン芯の位置関係は最初に是非確認してみてください。
 お納めしたときの書き味と、ペン芯の位置関係は良く覚えておいて、そこから少しでも異状があれば、何らかの原因でペン先先端の位置関係が変化したものと思われます。

 本稿から、横方向のズレを過度にご心配頂く必要はありません。通常使用では問題ないからです。ただ、このような理由により、私の責めではない部分で、書き味が悪化することがあるということがあることをご説明させていただきました。

 上記いずれも当方での販売製品・修理品に関するものです。
 他店の販売品では、そのペン芯の位置が正しい位置であるか、書き味はベストか、先端位置関係も食い違っていないか、などは、問題が無い状態であると推定することは出来ますが、見なすことはできません。私には把握しようがないので、他店販売品については、拝見しない限りわかりません。店頭で確認チェックしてユーザーに渡すような体制や、購入時に店員さんにチェックしてもらえる体制が整っているとよりベストとは思いますが、現在の販売実際界にそれを求めるのは困難であります。通常は全く心配は要りませんが、どうしても気になる方は、当方のようなところでお求め頂くしかありません。
検品調整スタンスの詳細

ルーペでのチェックについて
 よく、ルーペ(拡大鏡)での確認チェックについてご質問を頂くので、今回付記しておきます。
 この点ルーペを店頭に用意すれば誰でもチェックできると思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はルーペでのぞいて判断するのは非常に難しいのです。
 比喩としてはやや極端かもしれませんが、聴診器で心拍音を聞いただけでお医者さんは診察できるようですが、一般の人が聞いても判断できません。万年筆はそこまで難しいものではないと考えますが、ルーペ一つで、形状の問題のみならず、インキ出・書き味など、書いてみなくてもわかるものです。インキ出や書き味をルーペ一つで容易に判断するのは、やはり、熟練を要します。



 横方向のズレや、変形などは、ご自身でお使いになった場合よりも、他人に使われた場合に起きることが多いです。たとえば、私がお送りした後、書き味の良さをご家族みんなで試して、いつの間にかペン先が変形してしまって書き味が悪くなった、という事例が過去にございました。やはり、貸し借りはするべきではありません(貸し借りをしない方が良いと言われる理由はこの点にあるのです)。もちろん、貸し借りをしても、変形させないような使い方をすればよく、他人に貸しても筆圧やご使用方法が問題なければ、書き味は一切変わりません(そうでないと、そもそも店頭の試し書きは出来ないということになってしまいます)。同様に、私ども修理者が試させて頂くことは、そのペン先を傷めないような書き方をしているので、何ら問題ありません。
 また、資格試験用途などのように、過度な筆圧が掛かってしまうことがあり得る用途で、起こる場合があります。

店頭での試し書きについて
 家族で試して、変形してしまった、ということだと、店頭での試し書きにリスクはないのか、と思われる方も多いと思います。現実的にそのようなお問い合わせも多いです。
 実際、店頭で自由に試せる試し書きセットの万年筆ペン先が無残な状態になっていることも多いです。
 通常は特にご心配要りません。、もし、ずれているものやそれにより書き味が悪化しているものがあれば、それこそ店頭の試し書きの時点でわかると思うからです。
 また、万年筆のご使用に慣れていらっしゃらない方は、お試しになるとき、店頭品を壊してしまいそうで怖いというご意見も多いですが、遠慮無く店員さんに使用方法のアドバイスを受けるべきです。
 どうしても気になる方は、未開封新品があればそれを出してもらって買うか、当方のようなところでお求めになるしかありません。
 お店やメーカーによっては、試す万年筆は、特定のもので、渡す商品は別の未開封新品というようにしているところがあるようです。この点、「実際購入するその1本が試せない」というご不満も多いと聞いていますが、後述の「不特定物」であることもあいまって、試す万年筆とお渡しする商品が分けてあるのも一理あるわけです。
 現在において、多くの店舗では、特定のある商品を所望しても、同一の商品において、膨大な本数の同じ商品から良いものをピックアップするような選び方は出来ませんし、仮に同一の商品の在庫が多数あっても、店頭に在庫している1本から多くて2本しか試せないのが通常でしょう。と、なると、試す意味もあまりないような気がしています。それに、実際問題、それほど大きな差はありません(あったら逆にその方が問題です)。店頭では通常インキ出や書き味が変更出来ない以上、代替の利く不特定物ということになり、個性はありません。
 私のところでは、すべての商品において、書き味をチェックし、良くし、インキ出もご希望に沿って検品調整しています。もはや不特定物ではなく、特定物なのです。
 詳細は、過去記事をご覧下さい。
 試し書きリスクも減り、その商品の持つ一番良い状態でお納めしているので、ペン先先端の書き味に関する限り試し書きは不要と考えています。私が、現在のような形で販売できるのにはこういった考えがあります。



 ちなみに、パイロット製品ではありませんが、先端イリジウムが柔らかい(柔らかすぎる)商品の場合、書けば書くほど書き味が悪くなる可能性があります。

 通常はご心配要りませんが、先端形状が変化すると書き味は悪化してしまうということはじゅうぶんご注意下さい。
 ペン芯位置をご確認頂くのが良いですが、実際問題、使用していて書き味が悪化すればわかりますし、ご自身の実感する書き味のみをバロメーターとして頂ければじゅうぶんと思います。
 従って、本稿は、念のための注意事項としてご参照頂ければじゅうぶんです。
 商品ご選択について、お悩みの点はお問い合わせ下さい。ご選択のアドバイスさせていただきます。
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 masahiro万年筆製作所  代表者 内野成広

Author: masahiro万年筆製作所  代表者 内野成広
総エボナイト製手作り万年筆を製造しております
一切の妥協を許さない完全な商品を目指し、生涯唯一の職業として励んでおります
ペン芯までエボナイトで製造している数少ない万年筆メーカーです。

また、株式会社パイロットコーポレーション 正規販売店として、パイロット商品の販売をいたしております。

422-8017
静岡市駿河区大谷769-3
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