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M形吸入方式万年筆の耐久性とメインテナンス性について

 M形吸入方式万年筆の吸入機構に関しまして、耐久性とメインテナンス性について、お問い合わせが多いため、ご案内させて頂きます

 M形吸入方式万年筆は、相当前から企図しておりました吸入方式で、最初に試作したのはもうずいぶん前のことになります
 試作に次ぐ試作、改良を重ね、耐久性なども入念に試験し、販売に至りました

 M形は、極めて耐久性が高く、masahiro万年筆製作所のダイレクトタイプと全く同じ水準の耐久性を誇っております
 
 M形吸入方式の動画(この記事の下の方にもあります)をご覧いただきますと、ゴムをつぶして吸入するような単純な構造とは違い、とても複雑な構造で壊れやすいのではないか?と思われる方も多いと思います。確かに、万年筆の歴史をみてみますと、非常に複雑で壊れやすい吸入構造の万年筆も多く、専用部品が入手出来ず、今となっては修理できない万年筆も少なくありません。

 私自身、万年筆の修理を数多く行って来て、一部の海外メーカーの国内純正修理も行って来た経験から、難しい修理も、部品を作ったりして、何とか直して参りましたが、構造に欠点があったり、耐久性が低い万年筆に閉口することもありました。
 確かに、現在主流のカートリッジタイプは、メインテナンスフリー性では、抜群のものです。首にインキ供給に関するすべてのパーツが集中しておりますし、つくりつけの吸入機構がないために、吸入機構が壊れるということもありませんし、コンバーターをお使いの場合はコンバーターの動作が悪くなればコンバーターを買い換えれば済みます。
 メインテナンスフリー性を追求するならば、カートリッジ式に勝るものはないでしょう
 
 とはいえ、やはりM形の吸入動作は抜群のおもしろさがあり、何とか形にしたい、そして、耐久性を良くしたいと考えた結果、M形吸入方式万年筆の設計の際に心がけたことは、
メインテナンスフリー性を追求する、ことだったのです

 M形の吸入方式は、吸入部品を作るのは非常に難易度が高いですが、部品を作ることが難しいのと、耐久性とは全く関係ありません。各パーツの寸法を吟味することにより、吸入量や、吸入動作が適切になります。
 また、インキの中を吸入機構が動作するために、現在主流の吸入方式であるピストン吸入方式のように、ピストン背後にインキが漏れる恐れがあったり、ピストンの潤滑に気を配らなければならない、といった心配もありません。
 ダイレクトタイプと全く同じ耐久性でご使用頂けます

 耐久性やメインテナンスフリー性を向上させるために、従来品より改良した点を具体的にご紹介します
 以下の●も、M形吸入方式向けに開発したりしたものですが、ダイレクトタイプにも反映されており、M形吸入方式万年筆発売前の商品からすでに採用しています。

●加工精度向上
 素材自体の真円度や円筒度を向上させ、振れや曲がりの無い状態にしてから、入念に精密な加工を施しております。接合部分のネジも、精度良く切っており、皆様にご好評頂いております
 軸全体の耐久性を向上させるには、この加工精度はとても重要です
 たとえば、もし、ネジがラフに切られていたとしますと、ネジを締め付けても、閉め終わりでネジがはじくように再び外れてしまうようなネジ(食品の容器のふたなどで良くありますが、おわかりいただけますでしょうか)になってしまいます。私の切ったネジならば、きつく閉めても、一切ネジがはじくことはありません。ぎゅっと締めて頂いても全く問題ございません。閉め終わりもぴたっとした感触で閉め終わるようにしてあります。強く閉めても、ほどほどの力で閉めても、キャップ内部の気密などを保つように設計されております。

●エボナイト輸入材の使用
 エボナイト素材はいくつかの国で生産されておりますが、入手難なヨーロッパ製の素材を使用しております。各有名メーカーが古くから使用している素材です。漆塗装を施す場合は、エボナイト素材の水準はあまり問題になりませんが、エボナイトの磨き無垢の表面肌仕上げの場合、素材によって仕上がりは大きく異なります。また、マーブル素材の場合、素材強度が製造メーカーによって大きく異なります。
 様々な試験を行った結果、私の納得のゆく素材、入手難とはなりましたが、あのバンドーレンのマウスピースにも使われているヨーロッパ製の高級エボナイト素材を確保し、商品を製造しております。
 まずは、素材となるエボナイトを吟味することにより、耐久性を向上させました。
 各素材の肉厚も強度が確保できる肉厚であることを確認し、およそ、お子様が足で踏んでも割れない強度にしてあります。

●コルク全廃
 軸内部に配置されている中芯と軸との間には、インキの漏れを防ぐためにパッキンが配置されておりますが、このパッキンとして、以前はコルクが使用されておりました。コルクは案外バカに出来ないものでして、耐久性は低いものの、軸設計がラフでも、素材寸法がラフでも、柔軟に対応出来てしまうところがあります。
 ただ、やはり、コルクは、耐久性が修理技術者によりますが、早くて半年、長くても7年くらいが限界です。
 また、コルク自体にカビが生えてしまうこともあります。
 私もコルクパッキンが使用されていた万年筆の修理にいろいろ苦心しましたが、方法はないわけではないものの、やはり、金額や安定性からも、コルクパッキンを配置するために作られた商品の修理にはコルクが一番で、コルク以外で行ってもあまり良い結果が得られません
 コルクを使用して修理した場合、不具合が出たら、潔くコルクを交換するに限ります。
 以前は、コルクの交換は、靴底の交換と同じ、と言われ、何年かに一度行うべき、必要不可欠なメインテナンスと言われておりました。機械時計の分解掃除、車の定期点検オイル交換のようなものでしょうか。
インターネット上で、従来のインキ止式万年筆のコルクが劣化したものを、コルク交換せずにご使用になり、「インキが漏れる構造の万年筆」と思ってお使いになっている方もいらっしゃいますが、決してそんなことはありません。軸に水を入れてコルクに水分を与えておかないと、割とすぐにコルクが傷むことがあり、耐久性が問題となるのです。水を入れておいても、10年は持ちません

 しかし、現代において、コルクを使用しているので定期的なメインテナンスを、といっても理解が得られるものではありませんし、私自身、コルクの耐久性や形状寸法の不安定さを考えると、コルクは全廃したいと考えておりました。
 とはいえ、中芯素材はエボナイト、パッキンはゴム素材ですとゴム、過去記事でご紹介したように、ゴムの樹液から作るエボナイトとゴムは、ゴム同士で、なじんでしまうことがあり、消しゴムのようなカスをだしてパッキン表面をかじってしまったりします。安易にゴムパッキンを配置しますと、必ずこのような現象に見舞われます。また、適切にパッキンを効かせないと、逆にインキが漏れてしまいます。
 試行錯誤の結果、エボナイト素材と親和性の低い自己潤滑作用があり高耐久性のパッキンを特注使用し、自動潤滑作用が働くように内部に給油機構を配置しました。給油機構と申しましても、軸内部のインキに油が混じることはありません。
 この結果、コルクを全廃し、安定的な方法に移行することができました

●首と胴の完全すりあわせ
 首と胴の接合部分について、インキの漏れを防がなくてはなりません。もし、首をゆるめることが無ければ、液体パッキンで固着させてしまう方法が考えられます。M形吸入方式万年筆でしたら、首をゆるめなくても使用できますが、M形吸入方式万年筆や、ダイレクトタイプは、首をゆるめて使用することが想定されていますし、可能なように設計されております。
 そのため、何らかの方法で漏れを防がなくてはなりません。
 この点、ゴムパッキン(Oリングのようなもの)を装着し、漏れを防ぐのが端的に思えます。しかし、ゴムパッキンですと、ネジの閉め終わりのゴムがかみ込むときに独特の重さ(ゴムの抵抗)が出て、締め付けしにくくなってしまいます。また、頻繁に開け閉めする首のパッキンは、他の部分よりパッキンが傷みやすいです。このような部分に配置するゴムパッキンは特殊なものになりがちで、入手が出来なくなると、漏れを防げなくなってしまいます。
 そこで、伝統的な、すりあわせ手法で、完璧に漏れを防いでおります。独自の試験方法で高圧を掛けて全品検査しており、密閉性は抜群です。

よくある質問で、すりあわせだけで漏れを防ぐことが出来るのか、疑問を呈されることがありますが、実は車のエンジンのバルブも、上記首と胴の気密保持と、全く同様の方法で漏れを防いでいるのです



●中芯自動調整機構
 M形吸入方式万年筆や、ダイレクトタイプ万年筆は、インキを止める弁が、軸内部に配置されております。後部つまみを閉めると、後部つまみから軸の中を通っている芯の先に装着されているそろばん玉状の弁が、首後部に当り、まるで車のエンジンのバルブのように、軸内部のインキはおろか、空気圧すら漏らさない、という構造になっております。後部つまみを閉めきった状態のときに、弁がぴったり当たるようにする、ということで、この微調整が従来から問題となっておりました。

かつてから、この種の不具合を、職人の専門用語として、
「ツキスギ」 後部つまみを閉めきる前に中芯弁が当たってしまい、インキを止めることは出来ているが、後部つまみを最後まで閉めきることができなくなってしまうこと
「サキモリ」 後部つまみを閉めても弁が当たらず、インキを止めることが出来ていない状態
と言われておりました


 軸を生産してから時間がたつと、不具合が起きることが多かったですが、従来の商品は上記のように定期的なコルクの交換が必須でしたので、その都度再調整されていました。その結果、あまり問題となることは無かったです。
 とはいえ、現代の万年筆では、中芯弁の不具合は絶対に避けたいものです。
 様々試行錯誤しました結果、中芯自動調整機構を配置し、中芯弁の当り具合を自動で調整できるようになりました。中芯を引き出して頂くと、後部つまみ中心に中芯弁自動調整機構の特殊工具を当てるスリ割りをご確認頂くことができます。

 中芯自動調整機構を設けた結果、中芯がメインテナンスフリーとなり、一切の心配が無くなりました。
 また、後部つまみはきつく閉めなくても、当たるまで緩く閉めるだけで、完璧にインキを止めることができるようになりました。
 
●中芯外径のアップ
 中芯は通常3㎜外径のものが使用されることが多いです。昔で言うと1分という寸法になります。
 しかし、3㎜では細くて、中芯を曲げたりすることが多々ありました。
 ダイレクトタイプでは「引き戻し動作」のときくらいしか中芯を引き出すことはなく、通常中芯を引き出すことはあまりありませんが、M形吸入方式万年筆では、吸入の都度、中芯をすべて引き出します。そのため、中芯がしなやか過ぎると、勢い余って曲げてしまう恐れがあります。
 この点を改良するために、中芯の外径を4㎜にアップいたしました。
 中芯外径が大きくなりますと、前述のパッキンとの摩擦が大きくなり、動作が重くなりがちですが、パッキン素材を吟味し、自動給油機構を配置した結果、大変スムーズな動作が確保できました。

○M形吸入方式のインキ吸入メカニズム
 M形吸入方式の吸入パーツは、インキの中で動作し、緻密な寸法で出来てはおりますが、吸入動作を行う都度
吸入部品にインキが流通するように出来ております。そのため、常にご使用頂いていれば、インキで固着したりすることはありません。また、仮に固着しても、通常のインキでしたら、何度か水を吸って頂ければ、すぐに回復しますし、当方での簡単な洗浄で容易に回復します。
 加工は難しいものの、吸入動作に不具合が起きる恐れはなく、非常に安定的に吸入いたします
 すべての吸入メカニズムをエボナイトで製造し、エボナイトの素材特性に特化した方法により実現している吸入方式です。吸入機構パーツの耐久性が抜群なのです。
 文字通り吸入素材まで、キャップ・首・ペン芯・胴その他クリップとペン先等以外の主要パーツはすべてエボナイトで作られている、他に類がない、本格的な総エボナイト万年筆です

修理や耐久性についていろいろ言われておりますが、実は、修理で一番問題となっているのは吸入機構などよりも、素材の耐久性なのです
 有名なアメリカの日本で一番売れた海外製万年筆も、素材が収縮してしまう不具合が起きて、すでに部品が無く修理にお困りの方が多いですし、一部の海外メーカーの一定時期の商品はひび割れが入りやすいです
 1960年代以降一定時期の商品は極めてやっかいな素材が使用された商品があります
 私自身修理の経験から、耐久性の無い素材や耐用年数が過ぎた素材の万年筆部品には閉口しっぱなしでした。
 1960年代や1970年代の万年筆よりずっと前、戦前の、適切に設計されたエボナイト素材の商品を分析しますと、極めて耐久性が高く、セルロイドとは違って素材が収縮せず高い形状安定性を保っています。



 私自身も自分で万年筆を使っております。メインテナンス性に不安があれば、やはり使用していて心配になりますし、使用する側の立場として考えると、出来ることなら修理で預けるようなことも避けたいです。
 また、製造側の立場としても、修理でお預かりすることが無いような製品にしたいです。
 なお、もしM形吸入方式の吸入動作に不具合が起きた場合、作業料金は無料で行っております。
 また、一本一本の特注品ではないため、修理部品も豊富です。自社製品の製造販売とパイロット製品の販売のみを行い、常に緊急対応できる体制にしてありますので、修理も迅速に可能で、おおむね1~2週間以内に完了いたします。

 最近は、ご自身で分解することが出来ることを売りにした、外国製のピストン吸入方式の万年筆も販売されているようですが、何より大切なのは、ユーザーが自分で分解することが出来るような構造にするのではなく、ユーザーが構造の不具合を全く心配しないで使用することができる商品にすることだと思うのです
 その上で、ユーザーでは簡単に分解できないくらい丈夫な構造にすれば、抜群の耐久性が確保できるのです

在庫ございます商品は、ペン先装着最終検品のみの2週間程度で納品できます
ご送金は完成時期で構いません

ご注文お待ちしております
ご注文方法や在庫などは以下に記載してあります
商品価格・最新在庫状況
在庫状況をPDF表示で見る

●赤マーブルエボナイト輸入材+透明アクリル複合材 (フォルカンペン先)
RIMG0108.jpg
RIMG0116.jpg

●緑マーブルエボナイト輸入材+透明アクリル複合材
RIMG0103.jpg
RIMG0113.jpg


在庫や金額等について、詳細は、以下をご参照ください

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ご注意
以下の動画では、PILOTのINK-70ボトルを使用しております
このボトルには、首軸端面を受け止めて、ペン先が瓶の底に当たらないようにする部材が入っています
このため、動画では、瓶内部の部材に首端面を当てて、瓶内部に押しつけるようにして吸入しております
決して瓶の底にペン先を当てているわけではありません

↓HD動画です


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 masahiro万年筆製作所  代表者 内野成広

Author: masahiro万年筆製作所  代表者 内野成広
総エボナイト製手作り万年筆を製造しております
一切の妥協を許さない完全な商品を目指し、生涯唯一の職業として励んでおります
ペン芯までエボナイトで製造している数少ない万年筆メーカーです。

また、株式会社パイロットコーポレーション 正規販売店として、パイロット商品の販売をいたしております。

422-8017
静岡市駿河区大谷769-3
masahiro万年筆製作所
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