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エボナイト素材の寸法安定性について

 エボナイト素材の寸法安定性について、これまでも何度かご説明させていただきました。
 エボナイトは、寸法安定性に極めて優れております。ネジなどを切った後、何年かして再度お預かりしてもネジの固さが緩くなったり固くなったりしていることはありません。再チェックしても、外径形状や寸法も変化しておりません。明治大正期の古い万年筆を分析しても、寸法形状は極めて安定していることに気づかされます。
 一方で、セルロイド素材は、時間がたつとどうしても寸法が収縮してしまいます。セルロイドの品質によって収縮度合いは大きく異なります。セルロイドで出来た古い万年筆のほとんどは部品が縮まってしまっており、ネジの固さが著しく固くなってしまっているものが少なくないです。過去、修理の際、ねじの切り直しを良く行いました。また、修理の時に機械に把握するとわかるのですが、素材が収縮することからも、外形寸法や形状はいびつになってしまっており、振れや曲がりが著しく、加工修正がやりにくく閉口します。この点では、セルロイドは、万年筆製造前にかなりシビアな管理が必要な素材と言えます(masahiro万年筆製作所では、デメリットが多い素材と判断し、セルロイド素材を使用した商品は製造しておりません)。
 万年筆にセルロイドが盛んに使用された全盛期であっても、セルロイドでは内部拡張力に対する耐性がないため、首やペン芯と言った重要な部品はエボナイトで作られていた位です。

 最近では、日常生活でエボナイト素材を手にする機会はほとんどないため、インターネット上では、エボナイト素材の特性をセルロイドのように紹介されている例を散見し、ご質問も多くお受けします。
 製造当初の寝かしが足りない場合、後になって痩せてくる(寸法が収縮する)事がある、と紹介されていることもあるくらいです。
 確かに、古いエボナイトの万年筆では、カブセ式キャップのふたが緩くなっていたり、ペン先の入りが緩くなっているものが多く、キャップやペン先が収縮したからこのようなことになったのではないかと思われるのではないかと推測します。
 しかし、セルロイドのように、製造後「寝かす」というようなことをしてもしなくても、寸法は収縮することはありません。これは、エボナイトの製法を考えれば、全く持って自明のことです。
 
 masahiro万年筆製作所では、エボナイト素材を注文生産したことがあり、製造後数週間も経っていない素材を試し削りしたことがあります。その後年数を経ても、別段寸法が収縮するようなことはありません。
 

masahiro万年筆製作所では、エボナイト輸入材を常に輸入しており、素材を豊富にストックしております。エボナイトが生産されてからの年数で申せば、期間が経過した素材を使用しております。この点では、「寝かした」素材ということが言えますが、意図的に寝かした素材を使用しているわけではありません。
 なぜ常に輸入して豊富にストックしているかと申しますと、エボナイト素材の場合、製造ワンロットで何本かまとめて購入することになるのですが、あるロットのときに不具合がありますと、同時に購入した他すべてが問題があるような場合が少なくないのです。常に即納体制を整え、素材をすぐに使用できる体制にしておくために、製造時期を分散させているのです。


 ちなみに、当方のストック素材では、数十年以上前の素材もございます。あえて古い素材を使用するメリットはありません。逆に古い素材であるが故に問題が起きることはありません。masahiro万年筆製作所では、相当に太い素材から、必要な外径を削りだして、外径をすべて整えてから使用しておりますので、素材の極めて良質な部分を贅沢に使用することができているからです。

 従来のカブセ式キャップのふたが緩くなるのが、仮に収縮のためだとしますと、キャップは固くなるはずです。

カブセ式キャップの場合、キャップ入り口は肉厚の薄い状態です。セルロイドのキャップの場合、同様な形状では、キャップ入り口が収縮してきます。過去記事の通り、これを防ぐためにキャップの内側にリングを装着することもあるくらいです。セルロイドのキャップは、まさにキャップ入り口が収縮して、固くなってしまっているものばかりなのです。エボナイトも収縮するのなら、セルロイドと同じようになるはずです。


 また、ペン先の入りが緩くなる点については、ペン芯が収縮して緩くなるように思われがちですが、ペン芯が収縮したのではなく、別の原因で入り固さが緩くなったものです。

昔は、軸製造業者・ペン先製造業者・ペン芯製造業者がそれぞれ別々で、それらを購入して各万年筆専門店の店主さんが部品を組み立てて、お店ごとのブランドで販売しているようなケースが多かったのです。(オールサン・アイデアル などといった個人商店のブランドがありました)。別々のところでそれぞれの部品を作っているため、時としてペン芯が硬すぎて入らなかったりすることがあり、そのようなときは、首に熱を掛けて無理矢理合わせたり、いろいろな修正が行われました。その結果、不安定な状態で組み付けられたものが少なくないのです。


 昔のインキ止式万年筆(masahiro万年筆製作所のダイレクトタイプと同じような構造のもの)でも、軸と中芯との間に装着されていたコルクパッキンが数年経つと必ず劣化して軸からインキが中芯づたいに漏れてきたものを、「エボナイト製の中芯が収縮したため」と説明されている例もあるようです。このような場合は、コルクを交換すれば万事解決し、通常中芯は一切交換の必要はありません(ただし、オノト万年筆では中芯が損傷している例が多く、交換を要すケースが多い)。

このようなコルク交換修理は、定期的に行う必要があり、「靴底の張り替え」と同じようなもの、と言われておりました。masahiro万年筆製作所のダイレクトタイプやM形吸入方式万年筆では、メインテナンスフリー製を追求し、コルク全廃、中芯弁自動調整機構などを有しておりますので、定期的な交換部品はありませんし、コルクが使用されていた時代の軸のように、年数経過後必ず不具合が起きる、といったようなことはありません。


 いずれにしましても、素材が自然に収縮したために状況が変化したものではありませんし、エボナイトの製造から加工まで年数を開けて「寝か」しても、状況はなんら変化するものではありません。

 エボナイト素材の中には、外径を研削し、表面肌を良くしたセンターレス研削素材というものもありますが、長手方向に大きく反っていたり曲がっていたりするものがあります。このようなものを見ると、素材が曲がったり収縮するのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、時間が経過して振れたり曲がったりしたものではありません。
 1メートルの素材で、万年筆に使用する60ミリ前後の長さの素材を採ると、短くカットした分、振れや曲がりは少なくなるものの、決してゼロにはなりません。短くカットした状態でも、加工レベルでは、大きな振れや曲がりになっており、とても満足できるものではありません。そのような状態ですと、精密な加工にはほど遠いため、masahiro万年筆製作所では、より工程数は増えますが、これまで何度かご紹介しておりますように、研削した素材をカットしてそのまま使用するようなことはせず、太い素材から削りだして使用しております。この結果、極めて高い真直度の素材が得られ、これがひいてはネジ勘合のしっくりさ、など、全体の完成度向上へとつながっています。また、荒い表面肌の素材であったり、極めて太い素材であっても、変わらぬ精度で問題無く製品化できます。以前は、振れや曲がりがあっても、センターレス研削素材をカットして使用するしかなかったので、機械に把握した状態で素材の振れを無理して修正して加工していたものでした。振れや曲がりがある素材を使用して製品化できても、後で修理するとき、作業しにくく、使っていて問題が起きることも少なくなかったものです。素材の精度を上げると、加工自体も行いやすく、機械に把握して回転させても素材は全くブレがありません。安定した商品を生産することができるのです。修理などの際に修正追加工するときも、とても作業しやすいです。
 
 素材の特性(長所も短所もあります)に沿った設計をし、素材特性に沿った加工方法を採用すれば、素材のよさを生かした商品を作ることができるのです。

 今も昔も日常生活でエボナイト素材を手にする機会は無く、まして、masahiro万年筆製作所で直輸入しているエボナイト輸入材など、手になさる機会は無いでしょう。
 まして、加工する機会など、まず無いと思います。
 そのため、イメージで語られることが少なくないのは無理もないと思いますが、エボナイトを加工している立場として正しい情報を知って頂きたくおもいます。

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 masahiro万年筆製作所  代表者 内野成広

Author: masahiro万年筆製作所  代表者 内野成広
総エボナイト製手作り万年筆を製造しております
一切の妥協を許さない完全な商品を目指し、生涯唯一の職業として励んでおります
ペン芯までエボナイトで製造している数少ない万年筆メーカーです。

また、株式会社パイロットコーポレーション 正規販売店として、パイロット商品の販売をいたしております。

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