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エボナイトについて その5 エボナイトの変色・曇り

 エボナイトは、変色するという特質があります。これは致し方ない点であります。エボナイトの変色については、後掲のような経過をたどります。
 一般には「変色」と呼ばれますが、色の変化よりも早く訪れる光沢が無くなる「曇り」の方に着目した方が良いと思います。

 変色は、後述のように、湿度と紫外線により促進されるので、乾燥した暗所に保存すれば変色はしません。


●エボナイト変色経過
 エボナイトは変色してしまうという性質があります。その変色経過はいくつかの過程があります。
 なお、この変色経過というのは、ユーザー様のお手元で変色していく課程を書いたもので、私どもが磨く経過ではありません。従って、新規製作時の磨く作業は、下からさかのぼっていくわけではありません。たとえば、後述のブルーミングが出たままで加工するようなことはありません。
 また、表面に漆を塗る場合は、この表とは全く別の対応が必要となります。ただし、漆を塗る場合は、軸ミガキの処理は非常に簡素化省力化されます。

 これまで、変色と曇りが混同されて来ましたが、変色(色)とと曇り(光沢)との違いを際だたせてみました。
 以下はランクAAから変色の過程を記載したもので、たとえば、古い品物をちょっと磨いた茶色い光沢軸はどのランクにも入りません。ある程度幅を持たせてお読み下さい。

 なお、磨きとは異なるエボナイトを切削した最高の表面(磨く前の状態で最高のレベル)は私のペン芯の裏側斜面と両脇で見ることができます。この部分はかなり念入りに仕上げております。磨いたAAランクのツヤも良いですが、切削の最高の表面も良いものです。曇ることがないのが最大のメリットです。

ランクAA 光沢:最高に良い 色:光沢漆を上回る輝く黒色
 最上級のツヤの状態です。通常ここまでのツヤを出すのは非常に困難です。当方の製品ではエボナイトのもつ最高のツヤを出しており、それは漆より遙かに勝るツヤです(それが持続しないのが悲しいことですけれども)。また、製造もとで、完全に磨かれたかをテストする方法を熟知していないとここまでの完全なつやは出せません。表面的なつや出しは簡単ですが、将来的な変色を遅らせる完全なつや出しが適切になされたか否かは、表面を見ただけでは到底わかりません。また、あまりにも上質のつやのため、磨いた直後でしかこのツヤは見ることが出来ません。逆に言えば磨いている私しか見ることが出来ない、虹色に光るものすごいツヤなのです。磨いた直後からすでに変色は始まります。
 エボナイトの特性を知り、エボナイトに特化したつや出し道具をそろえるとこのランクAAや次のAの最高のつやが出ます。つや出し前の表面面精度(表面荒さ)がかなり良くないとつや出しした表面がみにくいものになってしまいます。もっとも、このような表面精度は一般的にはわかりにくいです。しかし、確かめる方法はいくつかあります。私のところでは、この最上のつやを出した状態でお納めしています。色はつやのある真っ黒です。
 以前このツヤのものをエボナイト製造工場の方にお見せしたら、エボナイトはこんなにツヤが出るのかと逆に驚かれて、そのお言葉にこちらがびっくりしてしまいました。
 磨きに入る前の切削などの各段階で完璧に仕上げれば、ランクAAで、表面の面精度も素晴らしい仕上がりとなります。逆に、てづくりの味だ、などと言って、表面に削り痕を意図的に残したりしたら、絶対に良い表面は得られません。たとえあとで磨くと言っても、各段階で手を抜かないで完全に仕上げる必要があるのです。

ランクA 光沢:非常に良い 色:光る黒色
 ランクAAの最上のつやは、磨いたほんの一瞬に虹色に光るつやです。従って、お客様のところにお届けするときは、その虹色のつやは若干落ち着いたものになります。これでも、相当に良いつやではございます。色やつやのある真っ黒です。ランクAAとランクAは完全に水や、さらに過酷な「テスト液」をはじきます。
 一般的にはAA級とA級は見分けはつきにくいです。
 また、A級までつやを出すと、その後の変色や曇りが鈍化されるという特徴があります。

曇りの起きやすさは、エボナイト製造メーカーによっても違いがあります。A級までつやを出して、暗いところに置いておくと、曇りにくいのは事実ですが、メーカーによっては、暗いところ保存して置いても曇ってくる(「置き曇り」とでも言ったような現象でしょうか)ことがあります。masahiro万年筆製作所で主として使用しているエボナイト輸入材は、この置き曇りに強いです。現在は、以前採用していた素材よりも表面光沢を保つことが出来る素材に変更しております。


 なお、A級以上のつやを出すには、実質的には私のところなどで開発した専用の測定装置が必要です。以下のB級を少し磨けばきれいになりますが、表面がきれいに見えるだけで、実質的に改善されていない磨かれていないと言うケースがほとんどなのです。

ランクB 光沢:まぁまぁ良い 色:黒色
 保存状態にもよりますが、お納めしてだいぶ経って、お客様のもとでご使用頂いた時のつやがなくなってきたような状態です。また、通常エボナイトはこのBランクまでしか磨かれないことが多いです。
 店頭でディスプレイされた過酷な状態では、ほとんどがこのランクです。
 経験上、光に当てなければ、これ以上の曇りは進行しません。
 色は黒か若干茶色みがかったような感じです。
 管理が良ければ、これより下のランクになることはありません。通常のご使用には、ランクB位のツヤの状態がもっとも使いやすいです。

ランクC 光沢:無い 色:黒茶色
 若干表面が白くなってきて、使用しないときと光にさらされない部分(首軸など)と、光にさらされる部分(キャップなど)に違いが出てきます。かなり曇って、変色もかなり茶色くなります。
 ランクCまでになると、表面が水に反応し、たとえば、ぬれぞうきんで拭くと茶色く色がつきます。

ランクD 光沢:全く無い 色:茶色 
 さらに表面が黄色くなってきて、全く光沢がありません。表面を爪でこすると痕が着きます。

ランクE 光沢:全く無い上に粉を吹く 色:粉は白色
 表面に粉が吹く(ブルーミング現象、ブルーム現象)ような状況です。よほど管理がひどくない限り、このように粉が吹くようなことはありません。
 粉を吹いても、水洗いしたり、ぬれぞうきんなどで拭けば簡単に取れます。ただし拭いて乾いた後はとても曇って変色も著しい見にくい色となります。
 なお、ランクC位の表面でもブルーミングが起きることがあります。

●変色を防ぐには
 変色を防ぐには、変色のメカニズムを知る必要があります。
 エボナイトは、以前ご説明したように、架橋密度(加硫度)を極端に高くし、極限まで架橋して分子同士を完全に拘束したものですので、そのたくさん加えた硫黄が製造後エボナイトの中に残っているのです。ちょうど鋳鉄の結晶粒界中にたくさん加えられた炭素が存在するのと類似しています。
 エボナイト表面の遊離硫黄が空気中の水分と紫外線によりエボナイトをさらに硫化させます。それにより変色するのです。遊離硫黄により金製のペン先の表面が赤金色に変色することがあります。これを「エボ焼け」と呼んでいます。

エボナイトの表面が変色することをエボ焼けと呼ぶのは誤用です。


 エボ焼けが起きてもペン先素材に悪影響はありません。
 ペン先にエボ焼けが起きると、インキの出が悪くなるように言われることがありますが、適切に設計されたペン芯が装着されていれば、そのようなことはありません。少なくともmasahiro万年筆製作所製品ではご心配ご無用です。
 硫化は、空気中の水分と紫外線により促進されます。従って、水分と紫外線に配慮すれば良いわけです。
 「遊離」硫黄なのですから、時間が経てばエボナイトから硫黄が「遊離」しなくなり変色しなくなるのではないかと言われることがありますが、経験では、かなりの時間が経った戦前などのエボナイト素材も変色は起きます。なお、以前のエボナイトは、純粋なエボナイトではないものがあり、純粋なエボナイトとは同列には比較出来ないケースも多いです。 

 エボナイトの変色は、エボナイトの品質が悪いために起こるのではありません。保存状態や、エボナイトが製造されてからの年月などによります。
 エボナイトの変色といっても、前述のように何段階かの過程があります。
 エボナイトの変色を防ぐには、なんと言っても乾燥した暗いところに置くことです。また、製造された初期の段階で、最高のつやを出すことです。当方の製品ではエボナイトのもつ最高のツヤを出しており、それは漆より遙かに勝るツヤです(それが持続しないのが悲しいことですけれども)。また、製造もとで、完全に磨かれたかをテストする方法を熟知していないと完全なつやは出せません。表面的なつや出しは簡単ですが、将来的な変色を遅らせる完全なつや出しが適切になされたか否かは、表面を見ただけでは到底わかりません。
 表面に油を塗布したり、手の脂でこするなどは、表面のツヤが出ていかにも変色しにくいような感じがするだけで、変色防止にはまったく効果はありません。例えばマシン油にどぶ漬けしておいても変色するのです。
 同じ棒から切断して作った軸でも管理方法によって、驚くほど全く違った変色になります。
 もっとも、変色しても強度にはあまり関係ありませんし、再度つや出しは可能です。良くご質問を受けるのですが、私の品物はつや出しをしてもネジが痩せるということはありません。なぜならば、ネジの部分は、磨く必要はないからですし、ネジのかみ合わせもたいへん理想的な深いかみ合わせにしているので、仮にネジを磨いたとしても、影響が出るようなことはありません。ただ、変色したらその都度何度も磨くというのは考えものです。管理状態が良ければ変色は劇的にはしませんし、ランクAAのツヤが持続しないとしても、それ以上の素晴らしいメリットがエボナイトにはあるので、その点に注目していただきたいです。もっとも、エボナイトのメリットを生かすような設計をしていなければ駄目で、エボナイト素材の万年筆なら良いというわけではないのは言うまでもありません。

※純毛でこすっていただくと、表面の色つやが良くなります。着古した純毛のセーター生地などで拭っていただくのが便利です。
 研磨剤などで磨くことは感心しません。



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 masahiro万年筆製作所  代表者 内野成広

Author: masahiro万年筆製作所  代表者 内野成広
総エボナイト製手作り万年筆を製造しております
一切の妥協を許さない完全な商品を目指し、生涯唯一の職業として励んでおります
ペン芯までエボナイトで製造している数少ない万年筆メーカーです。

また、株式会社パイロットコーポレーション 正規販売店として、パイロット商品の販売をいたしております。

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