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エボナイトについて その6 エボナイト周辺知識

・プラスチックの総称として使用される「エボナイト」という名称
 エボナイトは黒いプラスチックの総称として呼ばれることがあります。
 しかし、今現在、エボナイトはほとんど手にする機会はありませんし、エボナイトで製造されたものもほとんどありません。
 
・エボナイトは天然素材か
 エボナイトは天然素材か、ですが、天然素材の定義に私は明るくありません。プラスチックも天然の石油から作られるので天然素材と言えるのでしょうか…
 エボナイトと輪ゴムは兄弟のようなものなので、輪ゴムが天然素材と定義されるならばエボナイトも天然素材なのでしょう。ただし、エボナイトは土には帰りません。
 エボナイトの原料は、生ゴムと硫黄、石油から精製合成された原料を使用していない※ですし、生ゴムから作るためまさに天然ゴム。従って天然素材と言っても良いと思います。

※もっとも、硫黄については、現在では、石油精製の際の副産物として大量に得られたものが使用されております

・現代におけるエボナイトの使用例
 現在エボナイトはほとんど手にする機会は無い、と記しましたが、現在ではどのような用途で使用されているのでしょうか。
 なんでもエボナイトで作れば良いというわけではありません。エボナイトの特徴が発揮できる(換言すれば他の素材よりもエボナイトで作った方が良い品物)ときにエボナイトが採用されるべきですし、採用されています。もっとも、万年筆のように、エボナイトで製造する方が良いとわかっていてもコストなどの面から採用されない場合が少なくないことには注意する必要があります。
 現代では、エボナイト素材は万年筆の他には、バスーン(ファゴット)内部や、楽器や喫煙具のマウスピースに使われています。バスーン内部の部品としてはエボナイトは欠かせません。
 ところで、昔のレコードはご存じだと思います。シェラックで作られた硬いSP盤、SP盤よりも柔軟性のある塩化ビニールで出来たLP盤やEP盤。レコードも実はエボナイトで作られた時期があります。しかし、スクラッチノイズがひどく、シェラック素材のSP盤の方が遙かに良かったそうです。
 以前は絶縁材料として多用されていましたが、現在は絶縁材料として使われることはほとんどなく、一見エボナイトに見えるものでも、熱硬化性樹脂(フェノール樹脂)が使用さていれるケースがほとんどです。
フェノール樹脂は1907年、アメリカのL.H.ベークランドにより最初に発明された合成樹脂で、ベークライトや、フェノールホルマリン樹脂とも呼ばれ、ヤカンや鍋の取っ手として見ることができます。外観はエボナイトにどことなく似ています。

 プラスチックには熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂があるということは皆さんもご存じだと思います。前述のフェノール樹脂は熱硬化性、後述のAS樹脂は熱可塑性樹脂です。両者のわかりやすい説明をしてみると以下のように言えます。

熱硬化性樹脂
 成形の時に熱と圧力とが加えられると硬化して形を得られます。しかし、再び加熱しても柔らかくならず、再成形ができずそれを加熱するとそのままの形で焦げてしまうプラスチックを言います。
 再成形できないので、廃棄物のリサイクルが課題になります。
 熱硬化性樹脂の特徴をたとえて言えばせんべいと言うことができます。
 詳細は略しますが、熱硬化性樹脂は、三次元網目構造、架橋、と言った点で、ゴム(エボナイト)ととても類似しています。

熱可塑性樹脂
 成形の時は熱硬化性樹脂と同じですが、再び加熱すると溶けて、冷やすとそのままの形で固まるため、何回も加熱・冷却を繰り返えすことが可能です。
 特徴をたとえて言えば、キャラメルと言えましょう。



・エボナイト素材以外の万年筆素材
 エボナイト素材ではない万年筆は何で作られているのでしょうか。
 昔から伝統的に使われている素材は、AS樹脂(ABSにあらず)です。メーカーでは公表しておりませんが、現在でも軸・キャップや部品にはAS樹脂で作られたものが販売されていると思います。少なくとも昭和30年代40年代の万年筆はAS樹脂である可能性が著しく高いです。
 なお、AS樹脂はABS樹脂とは違います。ABS樹脂も硬化塗装を施した上で筆記具素材に使用されておりますが、AS樹脂の方が向いているようです。

参考 AS樹脂について
 発泡スチロールや多くの日用品素材に使われているとなっているPS(ポリスチレン)の特徴を生かしながらその欠点を改良したプラスチックの一つとして、スチレン・アクリロニトリル・コポリマーがあります。海外では名称の略であるSAN(Styrene Acrylonitrile Copolymer)と呼ばれておりますが、日本ではAS樹脂と呼ばれています。
 AS樹脂は比重1.07-1.10の非結晶性ポリマーで、PSの機械的強度、耐熱性、耐溶剤性、耐化学薬品性、耐ESC(環境応力亀裂)性、耐候性、表面硬度などが改良されており、表面光沢や透明性はやや劣るものの、一応、透明樹脂の中に入る範囲にあります。有機溶剤を除き弱酸・弱アルカリ・油類に耐えます。成形収縮率も小さく寸法精度も良いです。
 用途としては、透明で耐溶剤性が良いことから、ライター容器、扇風機の羽根、積算電力計器カバー、バッテリーケース、化粧品容器、文具、コーヒーメーカー、ジューサーミキサー、ヘアブラシや歯ブラシの柄などに使われている。
 手で触ってみた印象では、柔軟性や弾力性はなく、硬くもろい感じがします。
 AS樹脂(原料)は、以下のような商品があります(ここまで説明する必要はないですが…)
樹脂メーカー別商品名一覧
 旭化成ケミカルズ(株) スタイラック-AS
 奇美実用股イ分有限公司(台湾) キビサン
 ダイセルポリマー(株) セビアン-N
 テクノポリマー(株) サンレックス
 東洋スチレン(株) トーヨーAS
 東レ(株) トヨラック
 日本エイアンドエル(株) ライタック-A
 BASFジャパン(株) ルーラン
 ランクセス(株) ルストランSAN

 AS樹脂の比重は1.07-1.10ですが、エボナイトの比重は1.2位です。1よりも大きいので、AS樹脂もエボナイトも水に沈みます。エボナイトの方がAS樹脂よりもほんの少し重たいということになります。



 現在では、アクリル樹脂(PMMA、ポリメタクリル酸メチル)も万年筆素材として使われています。
 アクリル樹脂は、比重1.19、エボナイトとほとんど同じ比重です。ガラスより光線透過率が良く、透明性に優れています。透明プラスチックの中では、最も耐候性が良い素材です。第二次大戦中から、飛行機の風防ガラスとして用いられ、「風防」という略称でも有名です。
 硬度が高く、表面光沢に優れることから、最近特に量産の万年筆素材として使われています。

・鉄の刃物とステンレスの刃物
 皆さんのご家庭には包丁があると思います。ステンレス製でしょうか。鉄(鋼)製でしょうか。
 ステンレスは錆びない(厳密には錆びにくい)から良いですが、鉄は錆びてしまいますね。しかし、本格的な刃物はみんな鉄製です。
 エボナイトも 変色すると言う欠点がありますが、素材としての性能の高さは、他の素材を寄せ付けないすばらしいものがあります。その点に惚れ込んだ私は総磨き総エボナイト万年筆を製造しております。エボナイトの変色を鉄の刃物の錆びと比較して考えてみてはいかがでしょうか。
 鉄というと、鋼と鋳鉄が、軟質ゴムとエボナイトの違いに類似しているというのは既述の通りです。


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 masahiro万年筆製作所  代表者 内野成広

Author: masahiro万年筆製作所  代表者 内野成広
総エボナイト製手作り万年筆を製造しております
一切の妥協を許さない完全な商品を目指し、生涯唯一の職業として励んでおります
ペン芯までエボナイトで製造している数少ない万年筆メーカーです。

また、株式会社パイロットコーポレーション 正規販売店として、パイロット商品の販売をいたしております。

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